「天皇陛下83歳の誕生日に考える生前退位」
今日、天皇陛下は満83歳のお誕生日を迎えられた。これに先立った会見で天皇陛下は、自らが生前退位のご意向を滲ませた8月の会見について内閣とも相談した上で表明したと憲法を尊重する立場を改めて明らかにした。
つづけて天皇陛下は多くの人が親身に考えてくれている事に感謝の言葉を述べられた。
今回の会見でも憲法尊重の立場を鮮明にする天皇陛下の姿勢がはっきりと示されていた。生前退位を滲ませた8月の会見も内閣と相談して表明したと述べられた。これ日本国憲法尊重の姿勢を示されたと同じ意味を持っている。
天皇陛下は毎年の節目節目で国民にお言葉を発せられているが、そのお言葉の特徴は常に日本国憲法の三大原則である基本的人権の尊重、国民主権、平和主義を尊重している活動と思いを必ず述べられている事だ。
今回のお誕生日の会見でも東北や熊本などの被災地で復興に尽くす人々、国民に言及する事で国民へ寄り添う思いを述べられた。それはつまりは国民主権や基本的人権を尊ぶお気持ちあってこそのお言葉だ。
更に陛下は日本との戦争で多くの犠牲者を出したフィリピンを訪問した事にも触れた。そして
10月にご薨去された三笠宮様についても戦争を経験した皇族でありそのお話を聞けた事は貴重な経験となったと述べられた。
三笠宮様といえば自ら軍人として先の大戦を経験した事を踏まえて戦後には大学などで教鞭に立ち平和主義を訴え続けておられた方であり天皇陛下も多くの事を貴重な話として心に受けとめておられるのだろう。
このように天皇陛下は今年のお誕生日会見でも基本的人権、国民主権、平和主義を三大原則とする日本国憲法尊重をお示しになられていた。天皇陛下は憲法において政治権力は持っていないが、自ら憲法尊重を語り続ける事で国民に今の日本国憲法の重要性を発しているのだろう。
ここで留意しなければならないのは、天皇陛下は日本国憲法の尊重を繰り返し国民に示しているが、それは時代が経ったものに固執しているのとは違う。天皇陛下は憲法尊重を前提にしつつも自らの生前退位の意向を既に滲ませた。
私は温故知新という言葉を思い浮かべた。天皇陛下は戦後に国民と共に築き上げて来た日本国憲法の三大原則に則った国づくりを継続する事をお考えになり、それを継承していく為の皇室のあり方について新たな形を作ろうと歴史的一石を投じられているのだろう。
その天皇陛下の思いは決して自分だけの問題として提起したものではないと思う。その思いは少なくとも近代以降においては明治天皇から始まり幾多の歴史の道程での模索から生まれた象徴天皇という立場を継承するという今上天皇陛下の強い意志なのだ。そして生前退位を国民に全身全霊で尽くす象徴天皇制為の礎、仕組みとしたいのではないかと思う。
来年には天皇陛下の生前退位についての対応が国会の場にあがってくる。安倍政権は今の天皇陛下一代限りの生前退位として特別立法で対処するかに伝えられている。民進党は皇室典範の改正で恒久的なものとすべきだと主張し出した。
こうした状況にあって私たち国民は今一度、天皇陛下のこれまでの活動、お言葉を振り返り、元旦の天皇陛下のお言葉と真剣に向き合わなければならないと思う。